「女性ばっかり贔屓して、男性を卑下する方向に進んでいっている。」

能力主義の保守派女性である平川さんにとって、フェミニズムは複雑な存在です。海外でのアファーマティブアクションと絡めてお話を伺いました。

企画説明

どうすれば私たちは他者への想像力をもう一度取り戻し、異なる他者と対話をすることができるでしょうか。私は長い間それについて考えてきましたが、いまひとつの仮説を持っています。それは、意見や主張の背景にある、その人の物語を共有することです。

理解できない、異常な、よくわからない人として否定しあうのではなく、むしろどのような経験が、その意見や主張を生じせしめたのかを尋ねることから始めたいと思うのです。「なぜこんな考えを持つのだ、それは間違っている!」という姿勢ではなく、「なぜそのように考えたのだろう。この人はどんな経験をしてきたのだろう?」という姿勢で、様々な対立を捉え直したいのです。

同性愛者を非難する人、出生前診断を肯定する人、外国人への生活保護に反対する人、いきすぎたフェミニズムを攻撃する人、天皇制を廃そうとする人、公人の靖国参拝に賛成する人、育休・産休制度を進めたい人、様々な人たちの「声」を取り上げ、その主張や意見以上に、その物語を尋ねる旅をしていきます。

(ステートメント全文はこちらから)

「フェミニズムって初めはいいものだったのに」

――早速ですが、多様性という記号を聞いて、あなたはどんな議論を思い浮かべますか?本企画の別の記事を読んでいただいたり、もしくは事前に回答いただいたポリティカルコンパスの質問項目の中で、「このように思わない人はちょっとありえない」のように、特にご自身の強い感情が惹起されるトピックがありましたら教えてください。

最近気になるのはフェミニズムです。私が高校生から大学生の初め、一回生までぐらいは、あんまり知識がなかったこともあって、「日本って男尊女卑がひどいな」って思ってました。

昔から結構、競争心とか負けん気が強い人間なので、男性に負けたくないとか女性の方ができることが多いとか、いわゆるフェミニズムの人たちの意見のようなものを持っていました。

ただ、韓国に1年間留学に行ってそこで哲学の授業を受けたんですよね。先生はアメリカで勉強してきた方で、韓国人の先生としては珍しく、フェミニズムとか日韓関係とかに関して、なんというか、やや親日的な方でした。

他の先生方は、日本がやってきた悪いことに関して喋ったりする先生も多いんですが、この先生はかなり日本よりな考えを持っていました。

この授業を通じて、フェミニズムって初めはいいものだったのに、だんだん汚染されてきたものなんだなって思うようになったんです。女性には、最初は選挙権とかなかったじゃないですか。それに関して、選挙権が与えられて、女性の権利が向上したということは良いことだと思います。

でも、今の時代、特にここ10年ぐらい、アメリカでmetoo運動が始まって、男女平等よりも、女性ばっかり贔屓して、男性を卑下するような方向に進んでいっていると感じました。

「日本人の女性の友達の中で政治的な話を真面目にできる人がほぼいない」

――平川さんは、行き過ぎたフェミニズムと穏健なフェミニズムの対立を感じていらっしゃるということでしょうか。それとも、行き過ぎたフェミニズムと保守主義の対立、ですかね。

私は保守的な方に入ると思います。ただ、今の時代、保守派って議論しづらいんですよね。何か言っても、あの人おかしいなと思われそうで怖いんです。

――本企画に協力してくださっている方でも、保守派女性の方は、保守派女性として何かを発言すると、「差別だ」「名誉男性だ」などと言われて、意見を言ってはいけない空気があったり、意見を言ってもわかってくれないとおっしゃっていました。

そもそも日本人の女性の友達の中で政治的な話を真面目にできる人がほぼいないですね。皆興味を持っていない。いえ、経験上、男女関係なく、日本人の友達と政治的な話をすることがないですね。

韓国で生活していると、日本よりも政治に興味がある若者が多いということは感じます。女の子よりも男の子の方が政治に興味があるイメージがあります。日本では学校教育のやり方にしても、政治に興味を持つきっかけがあんまりないですよね。韓国の場合は、火に油を注ぐような教育の仕方をしているのでやりすぎ感もあり、どちらがいいとも言えませんが…。

韓国は、まともな情緒も育っていないような子供たちに日本に対する憎しみのような感情を与えているようなんです。学校では左翼的な、韓国側から見れば右翼的ですね、そういう教育を受けて反日感情を持つ。

そういう意味で政治に興味を持つきっかけにはなるかもしれませんが、そんなことをして精神的に良い教育になるのか、そこが入口でいいのか、とは思います。

こうした学校教育を終えて、成人してから日本に良い感情を持つ人も韓国には結構多いようなんです。私の韓国人の友達は、日本がうらやましいってひたすら言っていました。

そう考えると、日本は全体的にニュートラルな教育をしていますよね。どこかの国に対して悪い感情を持ったりすることはない。私は広島出身ですが、アメリカが嫌いだとか絶対に思いませんからね。

小さいころから平和教育を受けて、原爆資料館に行ったり、修学旅行でも沖縄でひめゆりの塔を見に行ったりしましたが、教えられたのは戦争はいけない、絶対に繰り返してはならない、ということで誰が悪いとか、アメリカに対する悪感情は全く持たなかったです。

――悪感情を持つぐらいの方が、人間は政治に関心を持つ、という仮説が成り立ちますかね?

ぶっちゃけて言いますけど、私中国めちゃくちゃ嫌いなんです。親の影響とかはないんですよね。両親とも小学校の先生で、海外に対する興味は育ったんですが、他の国に対しての悪感情っていうのは全く生まれなかった。でも、大きくなってからいろんなこと勉強するときに、中国ってそもそも人間性がどうなのかなって思う事件がいろいろあって。

ウイグル弾圧もすごく非人道的だと思いましたし、小さい頃からニュースで、中国の冷凍ギョーザ事件とか、メイドインチャイナの色んな商品の質の話題がしばしば出てきて。

メイドインジャパンが言われるほどすごいとは思っていなかったんですが、メイドインチャイナと比べたら、チャイナどうなっとん? とは思うんですよね。

今回のコロナ禍でも中国は嘘つくし、信用できない。それに対して、日本が中国の目を気にして、中国人が入ってくるのを止められなかったこととか…。

中国が大国になってるっていうのは実感するけれど、なんか、全然仲良くしたくない人種って感じてしまうんですよね。もう絶縁したいレベルに好きじゃないんです。

「韓国人は人が良くて、優しい人が多い」

――保守派に、中国が嫌いという方は多いですね。反中・反韓セットの人が多い印象がありますが、韓国に対してはどんな印象ですか。

もともと大学生の頃カナダに留学していたときに、韓国人の友達が初めてできて、そこから興味持って、人がいい、付き合いやすいなと思って、どんどん好きになっていきました。

今もご縁があって、韓国の大学院にいて、韓国に住んでいます。本当に人が良くて、実際に仲良くなるとものすごく優しい人が多いです。

日本人より距離感が近くて、気を回しておすそ分けをしてくれたり、色々心配してくれたり、いろんなことを相談しやすかったり、そういうところがすごくいいですね。

政治的なことを考えれば、日本政府はちゃんとNOを言うべきだと思います。そのほうが結果的に仲が良くなるんじゃないかなって個人的には思いますね。

曖昧な関係を続けてるから、韓国がやたら要求してくる。韓国が間違ってるのは明らかなんだから、そこをはっきり言うことって、お互いにいいんじゃないかなと思いますね。

――平川さんは、韓国に暮らしていることや、韓国人の方と関わることに対しては全然悪感情を持っていない。ただ政府という単位を見た時に、韓国政府の要求は過剰だから日本は断って、否定していったほうが良い、とお考えということですね。

そうですね。プライドとか嘘の話でどんどんこじらせていってる感じが強いので、やっぱり事実を基に話を進めていかないと、と思います。

韓国がやたら日本に謝罪しろって言いますが、日本は30回以上謝罪していますからね。小さい子じゃないんだから、言葉のニュアンスが伝わらないとか、気持ちがどうとか言ってる場合じゃないでしょ、と。

韓国の一番大きい道路作るお金どこからもらったんですか? 日本でしょう。20年間で急成長してOECDまで入ったのは誰のおかげだと思いますか? 日本でしょう。

そういう利害関係というか、お世話になったんだからそこは、仇で返しちゃ駄目でしょとすごく思いますね。

そういう事実を知って、理解している親日派の子だったら問題なくこういう発言もできますが、言うことで関係が壊れるのは怖いので、韓国人に直接は言いませんけどね。

私は韓国に留学して、今では生活していて、凄くお世話になっているのは事実なんですよね。でも、本当に日韓関係がよくなることを望んでいるからこそ、自分に嘘をつきながら振る舞うのではなく、今言ったようなことを考えているんです。韓国は滅んでしまえとかそういう激しいことは考えていないです。

「フェミニズムでは、最終的に女性としての尊厳が失われる」

――先ほどの行き過ぎたフェミニズムvs保守主義という話題に戻りたいと思います。平川さん自身はどんな立場なんでしょうか。

どこから話していいのかわからないんですけど…。私自身、結構プライドが高いほうなんですよね。それで、フェミニズムの人たちの主張に基づいて物事を進めていくと、最終的には女性としての尊厳が失われることになると思うんです。

少し前に韓国で国会議員の女性のパーセンテージを増やそうという動きがありました。でも、そのために「この男性よりこの女性の方が能力は低いけど、女性を入れなきゃいけないからこの女性を選ぼう」というふうになると、それは能力や実力からみて優秀な人が選ばれたのではなくて、女性だから選ばれたということじゃないですか。

それって、もし私がそうやって選ばれたら、すごいプライドが傷つけられることだと思うんです。平等に戦いたいのに、性によって実力に基づかずに選ばれるのって、不平等だと思うんですよね。

男性としても、女性よりも能力が高いのに、男性ってだけで落とされたんですよ。そうなると、それって不平等だしお互いに気分良くないと思うんですよね。私だったら、と仮定した話ではありますけれど。

ーー前提として実力主義的な世界観をお持ちなんですね。個々人の努力なども含めた結果についてまで平等を求めることは努力の価値を貶めるのではないかという懸念がある。

はい、その通りです。努力で得たものではない、もともと持ってるものによって区別された結果、平等を与えられる、というのはすごい社会主義的だなと感じて、すごく嫌なんです。

私の努力とそれによって得られた結果を見てほしいのに、努力ではなくて私が存在しているだけで得られるものがあるというのが嫌なんです。例えば、最低時給とかが、何もせずにどんどん上がっていくのってすごく嫌なんですよね。

ーー大前提として、社会主義的な価値観に対して「それは違うだろう」とお考えなんですね。そういった考え方はどんなところから生まれているものだと思いますか。

小・中学生ぐらいのころから感じてたことなんです。私は3姉妹の真ん中で、姉よりも妹よりも関心を得たい、興味を持って欲しい、という典型的な性格で、競争心がめちゃくちゃ強いんです。

学校だと、授業とかで頑張っただけ点数と成績という形で結果がでますよね。ただ、先生の見るポイントや評価するポイントについて不平等だと感じることがよくありました。

例えば、小学校のときのALTの先生の授業。「1位の子にはご褒美でお菓子をあげる」と言われたので、1位になってお菓子をもらおうとすごく一生懸命頑張ったのに、最終的には「クリスマスだから皆にあげるよ」ということになったんです。

そのときに、「私が頑張ったのはなんなの?」と思いました。最初から皆にあげるって言っていたならまだしも、明確な嘘を最初に言ったわけじゃないですか。たしかに皆お菓子を貰えて幸せかもしれないけど、一部幸せじゃない人だっている。

頑張ったのに皆と一緒って、それって不平等じゃないか、と小さい頃から思っていたのが始めだと思います。

だから、社会主義について勉強して、「貧富の差をなくすためにみんなが幸せになるために、その平等にしよう」というふうな説明を聞いたとき、すごく違和感を覚えたのを覚えてます。

頑張った人がいっぱいお給料もらって、いい生活して幸せになるのが、私にとっては幸せだと感じるのに、なんで頑張ってない人も頑張ってる人も同じように給料もらって、しかもその基準を低くされなきゃいけないのかって、すごく地獄だって思ったんです。

小さい頃から、考え方がすごく実力主義なんです。

ーー最近、ある大学が入試で、女性と多浪生の得点を一律減点していたことが判明しましたが、平川さんとしてはもう絶対に許しがたいものである、となるでしょうか。

初めて聞きましたが、許し難いですね。鳥肌立ちますね。ありえない。私のポリシーに完全に反しているので、とても腹が立ちます。

「アメリカのニュースも、今かなり左翼化されたリベラル系が多い」

ーー平川さんはフェミニズムという概念より、属性によってプラスされたりマイナスされたりすることに対して違和感をお持ちなのでしょうか。例えば大学入試で人種に対する追加点が付くアファーマティブアクションについてはいかがでしょう。

私の恋人は白人アメリカ人で保守派なのですが、このトピックは盛んに議論しました。彼はBlackLivesMatterのときニューヨークに住んでいて、まさにデモを目撃したそうです。

彼はBLMの動きには大反対です。何言ってんだと。頭おかしい動きだと。黒人は実際にはそんなに迫害されていない、といろんな本を読んでめちゃくちゃファクトチェックをしていました。

でも、アメリカのニュースも、今かなり左翼化されたリベラル系が多いように思えるし、かなり嘘で塗り固めてるな、というふうに感じます。

BlackLivesMatterも、平和的なデモと言っているけど、ニューヨークのお店めちゃくちゃ壊しまくってましたよね。それをどうやって平和的なデモってニュースで報道するんだ?ってすごく思いました。

それによって迫害されてる黒人もいるし、人々の生活が脅かされている。ただでさえコロナで大変なのに、さらに混沌を招いていたので、馬鹿のすることだよねって話をしていました。

実際のところ、私の彼氏がニューヨークで大学に通ってたときに、白人だからっていう理由で、少し損害を受けていたんですよね。

暴力ではないんですが、授業料の免除などを、大学の教授が優先的に私の彼氏には秘密で黒人やラテン系の子たちに優先的に与えていたようなんです。

ーーあくまで公正な競争の結果、という設定でということですか?

そうです。私の彼氏めちゃくちゃ成績良かったんですよ、いつもトップで。でも白人だから、恵まれてるから、あなたはそんなの必要ないでしょ、っていう勝手な偏見でその教授はそういうことをしていた。

私の彼氏はずっと日本に行きたくて、それをしょっちゅう教授に話してたのに、日本に行って英語の先生として働けるインターンシップみたいなのも、私の彼氏に黙って黒人とか、ラテン系の人たちに、譲っていたらしいんです。それを知ったときはもう、怒り心頭でしたよ。

そんなことがあったり、授業中にも、女の先生だったんですけど、白人男性が私の彼氏しかいなかったクラスで、いかに白人男性が世の中を牛耳ってるか、黒人、ラティーノ、アジア人たちがどんだけ苦しんでるかみたいな話をしたらしくて。

でも、私の彼氏は高卒で俳優になるための学校に通って、その後働いて貯めた自分のお金で大学に行ったんですよ。その話をされたクラスの中で、奨学金ガンガンもらって楽な暮らししてる黒人が一体どんだけいたんですかって話ですよ。 

私はまだ大学通ってますけど、彼はかつての大学の先生にそれだけ裏切られているので、大学に対しての悪いイメージがかなり強いですね。

大学も左翼の集まりで、通ったところで結局実用的なことってあんまり身につかない。いくら学位を持っていると言ったところで、アメリカでは博士を取ったとしても、あんまり良いところで雇ってはもらえないこともある、という話も聞いていて。

実際のところ実力は大事なんだから、働いたこともないのにいくら学位を持っていても頭でっかちだみたいな話をよくしています。

「私が性被害とかにあっていたらまた違う考えを持っていたかもしれない」

ーーフェミニストの人が、平川さんの「女性優遇は行き過ぎ」という考えを聞いたら、どんな言葉が返ってくると思いますか?

おそらく、「女性がどれだけ損害を受けているかあなたは知らないんだ」とか、「被害を受けたことがないからそういうことを言うんだ」というようなことを言われるのでは、と思います。実際私はそこまで「被害」を感じたことはないので。

私が性被害とかにあっていたらまた違う考えを持っていたかもしれないなとは思います。私がそういう経験を持っていて、許しがたい憤怒を持っていたら、ここまで保守派じゃなかったかもしれない。

でも、私もフェミニズムの人たちが言ってることを100%批判してるわけじゃないんですよね。行動の中でいいなって思うこともあるんです。

性被害のニュースを調べてみたりすると、すごいショックを受けるし、絶対あってはいけないことだと思います。性被害によってはセカンドレイプもあるじゃないですか。警察に届けたのにちゃんと取り合ってくれないとか。それによって二次的に被害を受ける人たちがいるっていうのは、絶対にあってはいけないし、そこは変えていかなきゃいけないと思います。

「性被害に対しての法律がなかなか変わらないのは、国会議員に女性がいないからだ」と言われたら、そうなのかもしれない。

例えば、北欧ってかなり女性議員の割合が高いって言うじゃないですか。そんな中で、スウェーデンだったか、デンマークだったかで、生理用品が全部タダで支給されたりとか、出産したら赤ちゃんが必要なものが入ったベビーボックスをくれて、福祉が充実してるっていう意味ではすごいなあと思うし、日本でもそういうのあったらいいなって思ったりしますけど。

現実には、日本での増税で生理用品が減税対象ではない、というのが話題になってたりしましたけど。

災害のときも生理用品は必需品ではないという主張もありましたが、かなり疑問を抱きましたね。「節約しろ」とか、何を言ってるんだろうって。本当、日本の性教育ってどうなってるんだって思いましたよ。性教育のレベル、低すぎませんかって。

ーー「女性は虐げられてきたのであって、あなたが知らないだけでそういう犠牲があるのだから、ちゃんと優遇されなければならないのだ」と主張しているフェミニストにはどんな印象がありますか。

そうですね。基本的にフェミニズムの人たちは、被害者精神が強いな、と感じますし、私から見ると、騙されてる、洗脳されてるというふうに見えますね。

「小中高と、大学の学科の友人たちはあまりわかってくれなかった」

ーー続いて「あなたと異なる意見を持ってる人の考えの背景になってる価値観ってなんだと思いますか」という質問に移りたいと思います。平川さんの周りの人は、「努力は報われるべき」という考えについてどんな考えをお持ちでしたか。

コミュニティによって違いますね。友達を選べるのって大学からだと思うんですが、私は大学に入ってから学科の子たちとあんまり仲良くなれなかったんです。

一学年50人弱の学科というかなり狭いコミュニティで、学科の勉強を頑張る子は多かったんですが、外に積極的に出て行くオープンな子はあんまりいなくって。  

でも、私はすごい海外に興味があったし、いろんなこと勉強したかった。外国人留学生がたくさんいたのもあって、総合科学部とかがあるキャンパスの方にもよく行って、外部の人を招いたイベントにもどんどん参加していました。

そういうイベントや、留学生と付き合う中で会った友達はやっぱり、意欲があって向上心があって、居心地がよかったですね。

いろんな話をしてもわかってくれたり、自分の意見言ってくれたりするんです。でも、小中高と、大学の学科の友人たちはあまりわかってくれなかった。

インスタグラムでフェミニズムを教え、広めるためのアカウントをフォローしていますが、その中で会社で上司が話してるのを盗み聞きした人の話を見たことがあります。

「男性Aは結婚したから昇進させてやらないとなあ」って言いつつ、「女性Bは結婚したからそろそろやめるだろうな、昇進させなくてええわ」みたいなことを話しているのを聞いてショックを受けたと。

私アルバイトを除いて日本で働いたことないんですけど、それを見てそんなの今の時代ある? って思ったんですけど、実際にあるんですね。

「背景を知ったうえでそこまで言われると、ノーとは言えない」

ーー平川さんと異なる意見を持っている、平川さんが被害者感情を強く持っていると思われる人たちの価値観は、どのような背景があるのでしょうか。想像で構いませんのでお聞かせください。

言われてみると、そういうふうに考えたことがあんまりなかったです。相手の立場になって考えるって大事ですね。

フェミニストの方達はおそらく、性暴力を経験したりとか、育ってきた過程で母親が父親に暴力を振るわれていたのを見たとか、そういう経験があったんじゃないかと思います。

抑圧されてきた過去を持っていたのが、今のフェミニスト関連の動き、ムーブメントによって、私たちも声を出していこうっていうふうに変わっていっているんじゃないのかなって思います。

ーー「性暴力」というのはどの程度のものを想定されたんでしょうか。

いまは、レイプレベルを想定して「性暴力」と言いました。ですが、私自身には被害がないのでなんとも言えませんが、周りからみたら小さなことでも、実際に経験した人からすれば言葉でのセクハラもトラウマになったりすることもあると思います。

どこからが被害になるのか、きちんと線引きがされるべきだとは思う一方で、許せる範囲は人によって変わってくるから、難しいですよね。だからやっぱり、被害者がいやだと思った時点でそれは被害になると思います。

小学校の道徳教育みたいですね。相手の気持ちを考えて自分だったらどうしますか、という話になってくると思います。難しいですね。

ーー性暴力を受けて、「女性の権利は大事で、男性は絶対許しがたい」という意見に至るのは平川さんとしても理解ができるということですよね。こういう人が、国会議員は男女同数にするべきだとか、例え女性の能力が低くても女性を先に昇進させるべきだと主張してきたら、どのように思われますか?

背景を知ったうえででそこまで言われると、ノーとは言えないですね。ああ、とても難しいですね。

ーーこれがまさにこのメディアをやっている理由だと僕自身では思っているんです。当事者のお話を聞いて、「そりゃぁ、この人がこう思うのは普通だよな」って思った瞬間に、何か一気にいろいろなことを反対も賛成もできなくなってしまう。このメディアを通じて、あらゆる人の信念が揺らいで欲しいと思っています。

私も、面白いなと思います。私自身も彼氏も保守派なので、意見が合うことも多いし、言えることもある。ただ一度、男性の方が給料を多くもらって当然だ、と言われたときはすごく腹が立ったし、全く理解できないと思いました。

私、今の彼氏と付き合うまではキャリア一筋で、自分ひとりで生きてくっていう気持ちがすごく強かったんです。結婚も出産も絶対しないだろうなって思っていて、自分のキャリアを積むことが第一だった。

でも、彼氏と付き合って1年ぐらいで、結婚したいし子供も産みたいっていう気持ちが強くなった。人間って変わるんだなって思いましたね。

でも、「女性より男性の方が長く働く」「男性の方が休みを取らない」「男性の方が文句を言わない」みたいなことを彼氏が言ったときは、は?って思いました。

私は今までこれだけ努力してきたのに、男性、女性と大きく括ってそういうふうに言われるのはすごく腹が立った。

でも、実際に周りの人たちを見てみればそうだなと思うこともよくあるんです。男性の方が文句言わずに着々とこなしてることも多い。それに、韓国には生理休暇があって、月に1日休めるんです。もちろん有給だし、学校なら欠席扱いにならない。

悪用する人もいて少し問題にはなってるんですけど、悪用ではなかったとしても、女性はどうやっても体調が悪くなる頻度が高くなるのは事実ですよね。

出産するときはどうしても休まないといけないし、子育てに関しても、いくら男女平等で子育てしようと言っても、女性しかできない部分ってあるじゃないですか。そういうこと考えると、彼氏が言うこともあってるなとも思いました。

「ディズニーって結構子供が見る映画じゃないですか」

あともう一つ腹が立ったのは、トランスジェンダーに関してでしょうか。これも彼氏とよく話す内容の一つなんですけど、トランスジェンダーに対してオープンになるのはいいことだけど、加速しすぎてるんじゃないかと思うんです。

初めは、男女トイレだけじゃなくて、トランスジェンダー用のトイレを作ろうっていうところから始まったらしいんです。そこからどんどん加速して、今ディズニーの新作でラテン系のレズビアンの女の子が出ているんですよね。

ディズニーもかなり左翼化が進んでいて、性の多様性を理解しようとか、白人ばっかり出してしまわないように、多様性をもっと入れようとしている。

でも、ディズニーって結構子供が見る映画じゃないですか。だから子供に対してそれがが悪影響を及ぼさないかっていう話をしていたんです。

リベラルの人たちに言うと怒られると思うんですけど、彼氏は、トランスジェンダーの人たちっていうのは一種の精神病だと考えていて。

それが全部ではないと思うんですけど、彼の知っている例だと、ちょっと障害のあるお姉ちゃんを持つ弟が親から関心をあんまり持たれずに育っていて。お姉ちゃんみたいになれば、親から関心を持ってもらえるかなって思ったのがきっかけで、女の子みたいな服を着るようになり、トランスジェンダーっぽくなっちゃったんですね。

カウンセリングを受けたことによって、大元の原因が、お姉ちゃんの障害があったために親が弟に関心を、愛を注いであげられなかったことだということがわかったらしいんです。

そして、そのカウンセリングを受けていくうちに、その弟はトランスジェンダーから、精神と体の性が一致した状態に戻ったっていう例があって。

そういう精神的なトラウマとか、過去に受けたことによって、トランスジェンダーになってしまう人たちがいるんじゃないか、そうだとしたら、その人たちに必要なのは、カウンセリングじゃないのかって私の彼氏は考えているんです。

というのも、今アメリカではトランスジェンダーの人たちが無料で手術を受けられるように仕組みを変えていこうという動きがあるようで。

ただ、私の彼氏としては、自分が働いて稼いだお金から納めた税金が、誰かの性手術のために使われるっていうのが嫌だと感じているんですよね。

私の彼氏は、アメリカ南部出身のキリスト教徒(カトリック)なので、思想信条としてもトランスジェンダーには反対なんですよね。私も、そこまではすごく納得できたんですが、言い方がすごく気にかかったんです。

「トランスジェンダーっていう精神的な病気じゃない、外科的な病気で手術が必要なのに受けられなくて困ってる人がいるのに、”女になりたいから手術を受けなきゃいけない〜”でしょ、あの人たちは。」みたいにふざけるような感じで言ったんですよね。

それがすごく気に障ったので、なんでそんなに気に障ったんだろう?と考えてみたんです。そしたらやっぱり、トランスジェンダーの本人たちは、例えば自分は女として生きたいのに、体は男だからトイレに行く度に苦痛を感じる、とか、ものすごく苦しんでいるということに思い至って。たとえ緊急で手術をしないと命が危ない外科的な病気ではなくても自殺したくなるような気持ちの人たちはいると思うんです。

私の彼氏のふざけた言い方が気に障ったので、私は完全なる保守ではないのかなとも思います。

私も彼氏の意見と、だいたいは同じ意見なんです。ただ、私はHSPの傾向があって、相手の感情とか気持ちを過剰なぐらい考える癖があるので、そういう人たちの気持ちを考えると、苦しいだろうなってすごく心が痛むんです。

「働き方と育児、どちらかをとらなくてはならない」

ーー能力主義の女性である平川さんにとって、女性の働き方はどんなふうに見えていますか。

女性は、会社だったり、何かしらの組織に、ある程度覚悟を持って入りますよね。結婚あるいは出産したら、働き方と育児、どちらかをとらなくてはならないという覚悟。

産休育休はとれないと思え、申請した瞬間に昇進はできなくなると思え、という覚悟。これは、男性には必要とされていないんですよね。女性だけがする必要のある覚悟なんです。

転勤だって、女性側が転勤になったときに、まず男性はついていかないですよね。とすると、女性は辞めるしかない、とか。なんでなのかよくわからないですけどね。

多分、何十年も産休を取らずに長時間働ける男性を優先しよう、ということなんだと思いますが、どうしてそうなっているのかって、そういう状況が残されているから、ただそれだけが理由ですよね。

そういう覚悟を求められる時点で、実力はあるけれど入らないという選択をする女性もいるわけですよね。だから、実力主義で本当に素晴らしい能力を持った人が活躍する社会を望むのであれば、そういう覚悟をしなくても良い社会になった方がいいはずなんです。

特に日本の会社の労働時間は長すぎて、生産性が悪すぎると思います。生産性が悪いから、それだけの時間働かされても忙しい。忙しいから女性はもちろん、男性だって産休・育休を取りづらい。

こういうのは、突き詰めれば日本の会社のマネジメント能力の低さ、というものに繋がるんじゃないかなっていうことを思ってます。

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